森バスのこと

小さな森を乗せて走る
特別なバスのこと
大きな森の中をユッサユッサ走ります
バスが走ると
小さな森の大きな木が
ファッサファッサと揺れるので
小さな森の鳥たちは
枝から離れたり、またとまったり
停留所へ着く度大騒ぎ

森の入り口から出口まで
1日に3往復走ります

銅版画凹凸版刷

こんな風に森の中を通るバスがあったなら
乗ってみたいと思う
バスに乗って窓を開け
空気を吸い込んで
青い匂いを吸い込んで
風を感じて
いろんな音に耳を澄ます
景色が今までよりずっと
広く感じるのでは？

だけど今
子供の頃に感じていた森は
なんだかとても
遠くなった気がします
それは
私が大人になったからかもしれない
乗り物のスピードが速くなったからかもしれないし
暮らし方が忙しくなったせいかもしれない
思えば
時間の流れもまた
急き立てられるように過ぎていく

時にはゆっくりと
なんでもない時間を
味わいながら過ごしたいと
近頃しみじみ思います

時間の早さや目に映るものは
その時の自分の有り様で
案外大きく変わるのかもしれない

まずは足元の
道の隅に根を張る植物に目を向けてみよう
どこからか転がってきた
小さな種を、まじまじと眺めてみよう
そうしたら少し
世界が広がって見えるかもしれないし
森がちょっとみじかに思えてきそう。

まだまだ寒い
一月後半です。